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 遺 言

[ 要 点 ]


◆未成年でも、満15歳に達すれば遺言をすることができる。

◆被保佐人が遺言をするには、保佐人の同意を必要としない。

◆成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復した時において、遺言をするには、医師2人以上の立ち会いがなければならない。

◆未成年者は、遺言の証人となることはできない。

◆夫婦であっても、同一の証書により遺言をすることはできない。

◆疾病その他の事由で死亡の危急に迫っている者が遺言をしようとするときは、証人3人以上の立ち会いをもって、その1人に遺言の趣旨を口授してこれをすることができる。




1、遺言

遺言とは、自分の死亡後の遺産分割の方保や相続分の指定、財産の贈与(遺贈)などを生前に定めておく意思表示である。たとえ、制限能力者であっても、以下のように遺言をすることができる。

1、15歳以上の者であれば未成年者でも、単独で有効に遺言をすることができる。(民法961条)

2、成年被後見人も遺言をすることができるが、事理を弁識する能力を一時回復した時に医師2人以上の立ち会いがなければならない。(民法973条)

3、被保佐人・被補助人の遺言については、特別の制限はなく、保佐人・補助人の同意なども不要である。

また、遺言は必ず、1人が1つの証書でしなければならないので、たとえ夫婦でも2人以上の者が同一の証書ですることはできない。(民法975条)


2、遺言の方式

遺言は、民法に規定する一定の方式に従わなくてはならず、これを違反すると、遺言は効力を生じない(民法960条)。

遺言の方式には、普通方式と特別方式がある。原則として普通方式が用いられるが、特別方式は、普通方式を用いることが困難な場合に例外的に認められる。

普通方式には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類がある。(民法967条)

特別方式には、危急時遺言と隔絶遺言があり、前者はさらに一般危急時遺言(死亡危急時遺言)と、遭難船舶危急時遺言(船舶避難者遺言)に分類され、後者も伝染病隔離者遺言と在船者遺言に分類される。


(1) 普通方式

1、自筆証書遺言

遺言者が遺言の全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押す方式である。(民法968条)。自筆証書遺言は、遺言のすべてを遺言者自身が書くために、日付、氏名、押印の1つでも欠いた場合にはその遺言は無効となる。

氏名については、誰が遺言者であるかその同一性を確認するものなので、例えば、名しか記載されていなくても、本人と同一性が確認できるのであれば、その遺言は無効とはならない。(大判大正4年7月3日)

押印については、実印である必要はなく、認印でもよいし、指印でもよい。(最判平成元年2月16日)


2、公正証書遺言

証人2人以上の立ち会いのもとに、公証人が遺言者の口述を筆記し、それぞれが署名し、印を押す方式である。(民法969条、969条の2)


3、秘密証書遺言

遺言者が証書に署名・押印して、これを封印して、公証人と2人以上の証人が署名・押印する方式である。(民法974条)

なお、上記の証人には、未成年者・推定相続人・受遺者及びその配偶者や子・孫等はなることはできない。(民法974条)


(2) 特別方式

1、一般危急時遺言(死亡危急時遺言)

疾病その他の事由によって死亡の危急に迫った者が遺言をしようとするときは、証人3人以上の立ち会いをもって、その1人に遺言の趣旨を口授して、これをすることができる。(民法976条1項)

2、遭難船舶危急時遺言(船舶避難者遺言)

船舶遭難の場合において、船舶中に在って死亡の危急に迫った者は、証人2人以上の立ち会いをもって口頭で遺言をすることができる。(民法979条)

3、伝染病隔離者遺言

伝染病のために行政処分によって交通を断たれた場所にある者は、警察官1人及び証人1人以上の立ち会いをもって遺言書を作ることができる。(民法977条)

3、在船者遺言

船舶中に在る者は、船長又は事務員1人及び証人2人以上の立ち会いをもって遺言書を作ることができる。(民法978条)


3、遺言の効力

遺言は、原則として、遺言者が死亡した時に効力が生じるが、停止条件付き遺言(結婚したら、土地を贈与する等)は、条件が成就した時(結婚したとき)に効力が生じる。(民法985条)





遺言の撤回・遺贈・遺留分


[ 要 点 ]



◆特定受遺者は、遺言者の死亡後、何時でも、遺贈の放棄をすることができる。

◆包括受遺者は、自己のために相続の開始があったことを知った時から原則として3ヶ月以内に、単純もしくは限定の承認又は放棄をしなければならない。

◆公正証書によって行われた遺言は、他の遺言の方式に従っても取り消すことができる。

◆遺言者はその遺言の撤回権を放棄することができない。

◆共同相続人の一人が遺留分を放棄した場合でも、他の共同相続人の遺留分が増加するわけではない。




1、遺言の撤回

遺言は、自由に撤回できる(条文では「取消し」を使っているが、意味は「撤回」である。)できるが、遺言の方式によらなければならない。(民法1022条)

なお、遺言の撤回は、前の遺言と同一の方式である必要はない。例えば、公正証書遺言を自筆証書遺言により撤回することもできる。

前の遺言と後の遺言が抵触するときは、その抵触する部分は、後の遺言で前の遺言が撤回されたものとみなされる(民法1023条1項)

遺言者が遺言した後に、それと抵触する贈与などの契約をしたときは、その抵触する部分について遺言が撤回されたものとみなされる。(民法1024条)

なお、遺言者は、遺言を撤回する権利を放棄することはできない。(民法1026条)


2、遺贈

遺贈とは、遺言によって行う贈与のことをいう。遺贈を受ける者を受遺者という。

胎児も受遺者になることができる。(民法965条)

遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときには(同時に死亡した場合も含む)、遺贈は効力が生じない。(民法994条)

遺贈には、例えば、「私の財産の4分の1を遺贈する」というように相続財産の全部又は一部について一定の割合を示してする「包括遺贈」と、「この家屋を遺贈する」というように遺贈の目的物を特定する「特定遺贈」とがある。

包括受遺者は、相続人ではないが、民法は相続人と同じ権利義務を有するものと取り扱っている(民法990条)。したがって遺贈の承認・放棄については、相続の承認・放棄に関する規定が適用されるので、包括受遺者は、自己のために遺贈の効力が発生したことを知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所に対する申述によって、限定承認するか放棄するかを決定しなければならず(民法915条)、決定がなされない場合には、単純承認をしたものとみなされる(民法921条2項)。

逆に特定受遺者は、贈与契約と同じような地位を有するので相続の承認・放棄に関する規定の適用がなく、民法は、特定受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも、遺贈を放棄することができ、遺贈の放棄は、遺言者の死亡の時に遡ってその効力を生ずる(民法986条)というような別の承認・放棄に関する規定をしている。


3、遺留分

(1) 意義

遺留分とは、被相続人が贈与や遺贈によって処分(侵害)することのできない一定の財産の割合のことをいう。最低限、この割合の財産は、相続人に確保されることになる。

(2) 遺留分権利者と遺留分の割合

遺留分を有する者(遺留分権利者)は、配偶者・子・直系尊属である。兄弟姉妹は遺留分を有しない。

遺留分の割合は、直系尊属のみが相続人であるときは、相続財産の3分の1、その他の場合は、相続財産の2分の1となる。

なお、遺留分権利者が複数ある場合は、この遺留分の割合に、各人の法定相続分を乗じたものが各人の遺留分となる(遺留分の割合×各人の法定相続分=各人の遺留分。民法1028条)。

(3) 遺留分減殺請求権

遺留分を侵害する贈与や遺贈も有効であるが、遺留分権利者には、被相続人が遺留分の割合を超えて贈与や遺贈をした場合は、遺留分権利者は、遺留分を保全するために必要な限界で、遺贈・贈与の減殺(効力を消滅させること)を請求することができる(まず、遺贈を減殺し、それで足りないときに贈与を減殺する。民法1031条)

なお、減殺請求は、遺留分の侵害を知ってから1年以内に、又は相続開始後10年以内にしなければならない。(民法1042条)

(4) 遺留分の放棄

遺留分は相続人の利益のために認められるものなので、相続開始前の遺留分の放棄も、家庭裁判所の許可を受けたときは可能であるが、共同相続人の1人が遺留分の放棄をしたからといって、他の共同相続人に影響を及ぼすものではない。(民法1043条)

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