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 相続1 (遺産分割、相続の承認及び放棄) 相続2 (法定相続分、代襲相続)


[ 要 点 ]


◆被相続人は、遺言で遺産分割の方法を定めることを第三者に委託することができる。

◆被相続人は、遺言で遺産の全部又は一部について、相続開始の時から5年を越えない期間で分割を禁止することができる。

◆相続の開始前における相続の放棄は、無効となる。

◆共同相続の場合における限定承認は、相続を放棄した者を除き、共同相続人全員が共同してこれを行わなくてはならない。

◆相続回復請求権を行使できるのは、遺産の占有を失ってる真正相続人、相続分の譲受人であるとするのが判例の立場であるが、この請求権は、相続権を侵害された事実を知った時から5年、相続開始の時から20年で時効によって消滅する。




1、相続の意味

死亡によって相続が開始し(民法882条)、相続人が、被相続人(死亡した者)の一切の権利義務(一身専属的な権利・義務を除く)を承継することになる(民法896条)。

物権や債権などの積極財産だけでなく、債務などの消極財産も承継される。


2、相続の承認・放棄

相続は、被相続人の最終意思の尊重と相続人の生活保護のために認められたものである。そのために、相続人は、被相続人の財産を承継しないことも認められている。

被相続人には、借金(消極財産)しかないということもあり、この場合は、被相続人は、相続人は借金を残したいと思わないのが普通であり、また、借金は相続人の生活にとってマイナスになるものだからである。

このことを「相続の放棄」という。相続の放棄とは、被相続人の権利・義務を一切承継しないとすることで、相続を放棄した者は、初めから相続人でなかったものと扱われる。

また、財産を承継する場合にも、2つの選択肢がある。これが「単純承認」と「限定承認」である。

単純承認とは、被相続人の権利・義務(債務)の全部をそのまま承継することである。(民法920条)

限定承認とは、被相続人の積極財産により被相続人の債務を弁済し、積極財産が残ったときは、その残った積極財産だけを承継し、債務がだけが残ったときは自分の財産によって責任を負わないというものである。(民法922条)。

関係が複雑になるため、限定承認は、共同相続人の全員が共同で行わなくてはならないとされている(民法923条)。

相続人が限定承認又は相続の放棄をするときは、自己のために相続が開始したことを知ったときから3ヶ月以内に(この期間を考慮期間という)、家庭裁判所に申述しなければならない(民法915条1項)。

ただし、次ぎの場合は、単純承認したものとみなされる。(民法921条)

1、考慮期間内に限定承認も相続の放棄もしなかつたとき。
2、相続開始の事実を知って、相続財産の全部又は一部を処分したとき。
3、相続財産の全部又は一部を隠匿したときや消費したときなど。

相続の承認・相続の放棄の意思表示をしたときは、考慮期間内でも、これを取り消すこと(撤回)ができない(民法919条1項)。


3、相続財産の分割

被相続人が死亡したときは、相続財産(遺産)は、共同相続人の共有となり、これを共同相続人の間で分割することになる。

遺産の分割は、遺言により分割方法を指定したり、もしくは遺産分割の方法を定めることを第三者に委託しているときは、これによる(民法908条)。

遺言による指定がないときは、共同相続人の協議により、協議が調わないときは、家庭裁判所が分割をする(民法907条2項・3項)。

なお、被相続人は、相続開始の時から5年を越えない範囲内で、遺言により遺産の分割を禁ずることができる(民法908条)。


4、相続人の範囲・順位

相続は、被相続人の最終意思の尊重と相続の扶養のために認められたものであるため、誰が相続人になるかについては、民法が、被相続人は、誰に財産を残したいと思うか、どの範囲の人までその生活の面倒をみるのが妥当かという点から、次ぎのように規定している。

被相続人の配偶者は、常に相続人となる。それ以外の者は、以下の順位で配偶者とともに、相続人となる。

配偶者がいないときは子だけが、子がいないときには直系尊属が、直系尊属がいないときには兄弟姉妹が相続人となる。

なお、婚姻届出をしている者だけが配偶者であり、内縁関係にある者は、配偶者には含まれない。

第1順位として、子(養子・胎児・非嫡出子を含む。)
第2順位として、子がなければ、直系尊属(被相続人の父母や祖父母など)
第3順位として、子・直系尊属がなければ兄弟姉妹。


5、相続回復請求権

相続開始により、例えば相続欠格者や虚偽の出生届による子のように相続人らしくみえる者が相続財産を占有し、本当の相続人の相続権が侵害されることがある。

この場合に本当の相続人は、相続の回復を請求することができる(民法884条)。このことを相続回復請求権という。

相続回復請求権は、相続人又はその法定代理人が相続権の侵害を知った日から5年間で時効により消滅する。相続開始の時から20年を経過した時も同様である(民法884条)。





相続2 (法定相続分、代襲相続)


[ 要 点 ]



◆被相続人の子が相続を放棄した場合において、その者の子は、代襲相続権を有するものではない。

◆代襲者が相続の開始以前に死亡し、又は相続欠格事由に該当し、もしくは廃除によってその代襲相続権を失ったときは、代襲者の子がこれを代襲して相続人となる。

◆子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各2分の1となる。




1、代襲相続

被相続人の子が相続人になれないときは、その子(被相続人の孫)等が相続人になれるという代襲相続制度が認められている(民法887条2項・3項)。

被相続人の子は、次ぎの場合には、相続人になることができないが、孫がいるときは、孫が、子が相続するはずであった相続分を相続する。

孫が下記の1,2,3にあたるときは、さらに、ひ孫が代襲相続する(再代襲相続)。下記の1,2,3の代襲原因がある限り、再々代襲相続等と続く。

1、被相続人の子が相続開始以前(被相続人の死亡以前)に死亡していたとき。これには、被相続人と同時に死亡した場合も含まれるが、被相続人と相続人が死亡したが、その死亡時期の前後が不明の場合は、同時に死亡したものと推定される。

2、被相続人の子が被相続人、先順位・同順位の相続人を故意に殺害して刑に処せられるなどして、相続の欠格事由に該当するとき。

3、被相続人の子が被相続人を虐待するなどして、相続人から廃除されたとき。なお、相続の放棄は代襲原因にならないので注意すること。

兄弟姉妹が相続人となる場合に、兄弟姉妹に上記の1,2,3の代襲原因があるときは、その子(被相続人からみるとおい・めい)が代襲相続する(民法889条2項)。

しかし、この場合は、再代襲相続・再々代襲相続等は認められない。(代襲相続は1回に限られる)。


2、法定相続分

被相続人が遺言で相続分を指定していない限り、各相続人の相続分は、以下の通りである。このことを「法定相続分」という。

(1)第1順位の場合は、配偶者が2分の1、子が2分の1。
 なお、配偶者がいないときは、各順位の相続人が全部を相続する。

(2)第2順位の場合は、配偶者が3分の2、直系尊属が3分の1。

(3)第3順位の場合は、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1。

なお、同順位の子・直系尊属・兄弟姉妹が複数ある場合は、各人の相続分は平等である。ただし、非嫡出子の相続分は、嫡出子の相続分の2分の1となり、被相続人と父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の両方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1となる。


3、法定相続分のケーススタディ

(1)配偶者と子が相続人となるケース。

被相続人Aが死亡し、その配偶者B、実子C、養子D、非嫡出子Eがいる場合。

? ===== A(死亡) ===== B

    |           |

    E                    C D 

Bは配偶者なので2分の1を相続。C D E は子なので全員が2分の1を相続。
C D E の相続分の内訳は、2:2:1になるので、C及びDは2分の1×5分の2を相続。Eは2分の1×5分の1を相続。


(2)代襲相続があるケース

被相続人Aが死亡し、その配偶者B、実子C・Dがいた。そして、Dには子E・Fがおり、DはAが死亡したときにはすでに死亡していた場合。

A(死亡) ============ B

                      |
       C     D(死亡)

                             |

           E         F

Bは配偶者なので2分の1を相続。C・Dは子なので2人で2分の1を相続することになるが、Dはすでに死亡しているので、E及びFが代襲相続する。C E F の相続分の内訳は、Cが2分の1×2分の1、E F は本来Dが相続するべき2分の1×2分の1を二人で分けるので、2分の1×2分の1×2分の1を相続。


4、相続人の不存在


相続人がいない場合は、家庭裁判所は、被相続人と生計をともにしていた人や、被相続人の療養看護に努めた人など、被相続人と特別の縁故があった人の請求によって、相続財産の全部又は一部を、この者に与えることができる(民法958条の3)。

また、上記によって処分されなかった相続財産は、国庫(国)に帰属する。(民法959条)




法定相続分

「問」 父・母の間に三人の嫡出子X・Y・Zがあり、Xには二人の嫡出子A・B、Yには子のCと非嫡出子D、Zには養子Eがあるが、X・Yは既に死亡していた。

その後、父が相続財産360万円を残して死亡し、Zは相続を放棄した。

この場合、Dの法定相続分はいくらになるでしょうか?


※こういった形式の問題、出ますよぉ〜。






「解答」 30万円です。


< 解説 >

何度も言っていますが、こういった問題は、実際に図に書いて考えましょう。そちらの方が考えもまとまり、逆に時間の節約にもなります。

法定相続分は民法の第887条から第890条にかけて定められていますので、自分で目を通しておきましょう。

まず、配偶者がいない(すでに死亡または離婚)場合には、子、直系尊属、兄弟姉妹の順序で相続されます。

逆に、配偶者がいる場合は、必ず当該配偶者は相続人の一人となります。

1.配偶者と子が相続人の場合・・・配偶者が1/2、子が1/2

2.配偶者と直系尊属が相続人の場合・配偶者が2/3、直系尊属が1/3

3.配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合・配偶者が3/4、兄弟姉妹が1/4



この問題文では、父が死亡しましたので、もし子のXとYも生きていたとすると、相続人は母と子X、Y、Zの4人です。

そして、法定相続分は、母が1/2、子が各々1/6になります。

さて、子Zが相続放棄をしていますが、これは、初めから相続人でなかったことにする手続きです。(第939)

よって、Zはいないことになりますので、他の子の法定相続分が変わってきます。

つまり、XとYは、各々1/4づつの相続となるわけです。


では、この問題文のように、XとYが既に死んでいる場合はこの相続分はどうなってしまうのでしょうか?

この場合は、XとYの子が、代襲して相続をすることになります。(第887条第2項)

つまり、Xの相続分をAとBが、Yの相続分をCとDが、代襲相続する事になります。

この場合、AとBは、両名共に嫡出子ですので、各々1/8づつの相続となります。

CとDに関しては、Dが非嫡出子ですが、非嫡出子は嫡出子の1/2の相続分しか与えられませんので(第900条第4号但書)、結局Cが2/12、Dが1/12の相続となります。

よって、Dの法定相続分は、360万円×1/12=30万円となります。

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