[ 要 点 ]
◆賃貸借契約は諾成・有償・双務契約である。
◆民法上、賃貸借の存続期間は最長20年であり、20年より中長い期間を定めたときは20年に短縮される。
◆賃借人は、必要費については直ちに償還請求できる。
◆賃貸人は、賃借人が支出した有益費については、賃貸借終了時に償還しなければならない。
◆賃借人が賃貸人に無断で賃借権を譲渡した場合でも、賃借人に背信的行為と認められない特段の事情があるときは、賃貸人は賃貸借契約を解除できない。
◆賃貸借契約の解除には、遡及効がない。
◆賃借人が賃貸人の承諾を得て転化貸した場合は、転借人は賃貸人に対して直接義務を負う。
1、賃貸借
(1) 賃貸借契約
賃貸借契約とは、賃貸人が賃借人にある物を使用収益させ、これに対して賃借人が賃料を支払うことを約束することによって成立する諾成・有償・双務契約(目的物の引き渡しや契約書の作成は不要)である。
(2) 賃貸人、賃借人の義務
賃貸人は、1、目的物の修繕義務を負う。一方、賃借人は、賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、拒んではならない。また、賃貸人は、2、賃借人が支出した必要費(修繕費等)や有益費(エアコンの造作取り付け費用等)の償還義務がある。
この場合、賃借人は、必要費については直ちに請求でき、有益費については、賃貸人は、賃貸借終了時に償還しなければならない。
(3) 賃借権の譲渡、転貸の制限
賃貸借は、お互いの信頼関係の上に成り立っている。そこで、1、賃借人は、賃貸人の承諾がなければ、賃借権を譲渡したり、又は賃借物を転貸することができず、2、賃貸人に無断で、賃借人が第三者に賃借物を使用収益させた場合は(無断譲渡・転貸という)、賃貸人は、賃貸借契約を解除することができる。
ただし、賃借人の無断譲渡・転貸が背信的行為とは認められない特段の事情があるときは、賃貸人は、賃貸借契約を解除することはできない。
(4) 賃貸人の承諾を得た転貸
転借人は賃貸人に対して、直接に賃料の支払い等の義務を負い、この場合、転借人は、賃料を転貸人に前払いしたことを賃貸人に主張できない。
(5) 賃借権の対抗力
賃借権は債権であるが、例外的に不動産の賃借権は、登記できるとされている。その結果、不動産の賃借人が、賃借権についても登記をした時は、その後に当該不動産について権利を取得した者に対しても、その賃借権を対抗(主張)することができる。
(6) 賃貸借の存続期間
賃貸借の存続期間は、20年を越えることができない。存続期間が20年を越える場合は、20年に短縮される。
(7) 賃貸借の終了
賃貸借は、次の1〜5の自由により消滅する。1、期間の満了、2、解約の申し入れ、3、賃貸借に特有な法定事由による解除、4、債務不履行による解除、5、目的物の全部滅失。
(8) 賃貸借契約の債務不履行による解除
賃貸借は、当事者間の信頼関係を基礎とする契約関係であるため、賃借人に賃料の不払い等の履行遅滞がある場合でも、当事者間の信頼関係が破壊されたと認められる場合でなければ、賃貸人は、賃貸借を解除することはできない。
なお、賃貸借が解除された場合、将来に向かって賃貸借契約は消滅する。
2、使用貸借
使用貸借とは、例えば、テレビゲームを友人から借りて使用した後に返す場合のように、無償で他人の物を借りて使用収益した後その物を返還する契約(要物・無償・片務契約)である(民法593条〜600条)。
無償である点で、賃貸借とは異なる。また、借りたその物を返還する点で消費貸借と異なる。
使用貸借は、無償であることから、通常の必要費については借り主が負担する。(民法595条1項)
3、消費貸借
消費貸借とは、例えば、友人から20万円借りてパソコンを購入し、後で20万円返還するような場合のように、当事者の一方が金銭等の代替物を相手方から受け取り、後でこれと同種・同等・同量の物を返還する契約(要物・片務契約)である。(民法587条〜592条)
利息を支払う定めがなければ無償契約であるが、利息を支払う定めがあれば有償契約である。
消費貸借は、目的物そのものを返還するのではなく、それを消費して同種・同等・同量の物を返還する点で、賃貸借や使用貸借とは異なる。
請負・委任
[ 要 点 ]
◆目的物の瑕疵が重要でなく修補に過分の費用を要する場合は、瑕疵の修補を請求することはできない。
◆目的物に瑕疵があるときは、注文者は、瑕疵の修補とともに損害賠償を請求することができる。
◆建物その他土地の工作物の請負契約の場合、たとえ瑕疵のために契約を締結した目的を達成することができない場合でも、注文者は契約を解除することはできない。
◆委任契約は、特約がない限り無報酬である。
◆受任者は、たとえ無報酬でも善管注意義務を負う。
1、請負契約
請負契約とは、当事者の一方(請負人)が仕事を完成することを約束し、相手方(注文者)がその仕事の結果に対して報酬を与えることを約束することにより成立する。
(1) 所有者の帰属
完成した目的物の所有権の帰属について、判例は、1、注文者が材料の全部又は主要部分を提供した場合には、特約がない限り注文者に所有権が帰属し、2、請負人が全部の材料を提供した場合には、いったん請負人に所有権が帰属し、引き渡しによって注文者に移転するとしている。
(2) 請負人の担保責任の内容
請負人が完成させたものに瑕疵がある場合、1、注文者は、瑕疵の修補を請求することができる。2、ただし、瑕疵が重要ではなく修補に過分の費用を要する場合はできない。(民法634条1項)
1の場合、3、注文者は瑕疵の修補とともに、又は瑕疵の修補に代えて、損害賠償を請求することができる。(民法634状2項)
さらに、4、瑕疵が重大なため、契約をした目的を達成することができない場合は、注文者は、契約を解除することができる。(民法635条)
ただし、5、建物その他土地の工作物に瑕疵がある場合は、解除することができない。(民法635条但書)
なお、請負人の担保責任とは別に、請負人が仕事を完成しない間は、注文者はいつでも損害賠償をすることにより契約を解除することができる。(民法641条)
(3) 請負人が担保責任を負う期間
請負人が担保責任を負う期間は、1、動産の場合は、目的物の引渡の日から1年間、2、木造などの建物の場合は、引渡の日から5年間(特約により10年まで延長できる。)、3、石造り・土造などの建物の場合は、引渡の日から10年間、4、瑕疵により建物が毀壊した場合は、その時から1年間(特約により10年まで延長できる。)である。
2、委任
(1) 委任契約の意味と成立
委任契約とは、当事者の一方(委任者)が法律行為をすることを相手方(受任者)に委託し、受任者がこれを承諾することによって成立する契約である(諾成契約)。
法律行為ではない事務の処理を委託する場合も委任と同様に扱われる(準委任)。準委任には、例えば、弁護士に裁判を依頼したり、司法書士に登記を依頼したりする場合がある。
なお、通常、受任者は委任者から代理権を与えられているが、代理権を与えられていない場合もある。
(2) 委任者・受任者の義務
委任者は、1、特約がある場合に限り、報酬支払義務を負い(原則は無報酬)、報酬は、委任事務が終了した後でなければ請求できない。(民法648条1項・2項)
2、受任者の責に帰すべからざる事由によって、委任が中途で終了した場合は、すでに履行した割合に応じて、委任者は報酬支払義務を負う。(民法648条3項)
3、受任者の請求により、事務処理に必要な費用を前払いしなければならない。
4、受任者の立替費用を支出後の利息を付けて償還しなければならない。
(民法649条)
5、受任者が委任者のために自己の名で負担した債務を肩代わりし、又は相当な担保を提供しなければならない。
一方、受任者は、1、無報酬の場合でも、善良な管理者の注意により事務処理する義務を負う。(民法644条)。2、委任者の請求があった時、又は委任終了時に委任事務に関して報告しなければならない。3、事務処理のために受領した金銭・果実を委任者に引き渡さなければならない。4、受認者は、委任者のために自分の名で取得した権利を委任者に移転しなければならない。
3、委任契約の解除
委任契約は、当事者間の信頼関係を基礎とするものであるため、1、当事者は、いつでも自由に委任契約を解除することができる。(民法651条)
2、相手方に不利な時期に解除したときには、その損害を賠償しなければならない。ただし、この場合でも、やむを得ない理由で解除したときは、損害を賠償する必要はない。
4、委任契約の終了
委任契約は、解除によって終了するほか、次ぎの事由により終了する。
1、委任者の死亡・破産。2、受任者の死亡・破産・後見開始の審理を受けたことによって終了する。