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 多数当事者の債務 1、2

[ 要 点 ]

◆分割債務では、1人の債務者に請求しても他の債務者に影響を及ぼさない。

◆連帯債務者の1人について契約の無効・取消しがあっても、他の連帯債務者

◆連帯債務者の1人について債務の免除をした場合、その者の負担分についてのみ他の連帯債務者も債務を免れる。

◆連帯債務者の1人が債務の承認をしても、他の連帯債務者に影響を及ぼさない。
 




1、分割債務の原則

(1) 分割債務の意味

ABCの3人が共同して甲から3億円の土地を買った場合、債務者が複数ある場合は、分割債務になるというのが民法の原則である。

分割債務とは、いわゆる割り勘のことである。ABCは、それぞれ甲に1億円ずつ支払えばよいことになる。なお、分割債務の場合は、後述する連帯債務などのように絶対効が生ずることはない。


(2) 内部関係 

上記の場合でも、もし、Aが甲に3億円を支払った場合には、BやCの債務についても、Aが支払ったことになる。そのため、この場合は、Aは、BやCに対して「1億円を返せ!」と請求することができる。これを求償という。


2、連帯債務

(1) 連帯債務の意味

これに対し、ABCが連帯債務を負う旨の特約がある場合は、債権者甲は、ABCのそれぞれに債務の全額3億円を請求することができる。つまり、連帯債務とは、数人の債務者が連帯して債務全額の責任を負う場合のことを言う。

連帯債務において、債権者は、連帯債務者の1人に対して、又は連帯債務者の全員に対して、同時もしくは順次に、債務の全部又は一部の履行の請求をすることができる。


(2) 負担部分

この場合、債権者甲は、ABCから各3億円、合計9億円の弁済を受けられるわけではない。誰か1人、例えば、Aから3億円の弁済を受けたときは、甲の債権は消滅する。

この場合、全額弁済をしたAは、BやCに求償することができる。例えば、ABC3者間で「Aは2億円、B及びCは5.000万円を負担する」と定められていた場合は、AはB及びCに各5.000万円を求償することができる。

このように、連帯債務者は、債権者に対して各自全額の弁済義務を負うが、連帯債務者相互の内部関係では、最終的に負担すれば足りる割合が定められている。この割合のことを負担部分という。

負担部分は、連帯債務者間に特約などある場合は、それによるが、特約がない場合は、各自平等とされる。(つまり、各1億円)。なお、負担部分については、「Aが3億円、B及びCはゼロ」という場合もありえる。


(3) 連帯債務の絶対的効力(絶対効)

連帯債務者の1人に、次ぎの自由が生じた場合は、他の連帯債務者も影響を受ける。これを連帯債務の絶対的効力(絶対効)という。

絶対的効力は、1、請求、2、弁済(代物弁済や供託も同様)、3、相殺、4、更改、5、混同、6、消滅時効、7、免除の7つの場合に生ずる。

例えば、上記の例で、甲がAに3億円請求した場合に、BCに対しても3億円請求したのと同じになり、甲のABCに対する賃金債権の消滅時効はすべて中断する。

ただし、3、相殺、6、消滅時効、7、免除については、以下に注意すること。

3、相殺については、2つのパターンがあり、

ア、連帯債務者のAが債権者に3億円の債権を有する場合に、その連帯債務者Aが相殺をすると、他の連帯債務者BCの債務も消滅する。

イ、債権者に債権を有する連帯債務者Aが相殺をしない間は、他の連帯債務者B又はCは、Aの負担部分(1億円)の範囲内で相殺することができ、この場合は、他の連帯債務者BCは、Aの負担部分(1億円)の範囲内で債務を免れ、BCの各債務は2億円に減少する。

6、消滅時効、7、免除についても、負担部分についてのみ絶対効を生じる。


(4) 相対的効力(相対効)

上記の7つの自由については、絶対効が生じるが、それ以外の事由(債務の承認や支払いの猶予など)については、他の連帯債務者に影響を及ぼさない。


(5) 連帯債務者の1人についての契約の無効・取消

連帯債務者ABCは、本来は、それぞれ独立して債務を負担する者であるため(絶対効は例外)、連帯債務者の1人について契約の無効や取消があっても、他の連帯債務者の契約は有効に存続する。

つまり、Aの錯誤などによってA甲間の売買契約が無効となっても、また、Aの制限能力や詐欺・強迫を理由にA甲間の売買契約が取り消されても、B甲間、C甲間の売買契約は、何ら影響を受けず有効に存続するということである。




多数当事者の債務 2


[ 要 点 ]

◆保証契約は、債権者と保証人の合意のみで成立する。

◆主たる債務者に生じた事由は保証人に影響を及ぼす。

◆債権者が主たる債務者に対する債権を譲渡した場合、保証債務もそれに伴って移転する。

◆債務者が保証人を立てる義務を負う場合は、保証人は能力者で弁済の資力がある者でなければならない。

◆保証人は、催告の抗弁権・検索の抗弁権を有する。

◆保証人に請求しても、主たる債務者には影響を及ぼさない。
 




1、保証債務の意味、成立

保証人とは、主たる債務者がその債権を履行しないときに、これに代わって債務を履行しなければならない者のことである。

例えば、BがAから1億円を借金するに際して、Cに保証人になってもらった場合、Bが1億円を弁済できなくなったら、Cが代わって1億円を弁済しなければならなくなる。

この場合のBを「主たる債務者」、その債務を「主たる債務」、Cを「保証人」、その債務を「保証債務」という。

この保証人の保証債務は、債権者と保証人の間の保証契約により成立する。


2、保証人の資格

原則として、保証人の資格には制限がなく、誰でもなることができる。ただし、債務者が保証人を立てる義務を負う場合は、保証人は、a、能力者であり、かつ、b、弁済の資力を有する者でなければならない。

債権者が保証人を指定した場合を除き、保証人がbの要件を欠くようになったときは、債務者は、要件を満たした新たな保証人を立てなければならない。


3、保証債務の性質

保証債務は、主たる債務の履行を担保するものであるため、抵当権などと同様に、附従性・随伴性を有する。つまり、主たる債務が無効な場合は、保証債務も無効となり、主たる債務が取消し等により消滅したときは、保証債務も消滅する。(保証債務の附従性)

また、債権譲渡などにより主たる債務が移転した時は、(保証人の承諾がなくても)保証債務は当然に移転する。(保証債務の随伴性)。


4、保証債務の内容

保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときは、代わって保証債務を履行しなければならないが、保証人が負担しなければならない債務の範囲は、以下の通りである。

1、主たる債務者が負担している元本
2、主たる債務に関する利息(抵当権の場合と異なり2年に限らない)
3、主たる債務者に債務不履行があった場合の違約金や損害賠償など。

保証債務は、主たる債務の履行を担保するものであるため、保証債務が主たる債務よりも重いということは許されず、保証債務の額が主たる債務の額より重いことや保証債務の弁済期が主たる債務の弁済期より先に到来することはない。

保証債務は、主たる債務とは別個の債務であるため、保証人は、自分の保証債務についてのみ、特別の定め(違約金又は損害賠償額の予定等)をすることができる。


5、保証人の権利

(1) 抗弁権・検索の抗弁権

保証人は、主たる債務者が債務を履行できないときに、代わって債務を履行する者であるため、保証人には、次のような催告の抗弁権と検索の抗弁権が与えられている。

1、債権者が、主たる債務者に請求せず、直接に保証人に債務の履行を請求してきたときは、保証人は、まず主たる債務者に催告(履行の請求)をせよと主張することができる(催告の抗弁権)。

2、まず主たる債務者の財産について執行せよと主張することができる(検索の抗弁権)。


(2) その他の保証人の権利(相殺権等)

1、保証人は、主たる債務者が債権者に対して債権を有している場合は、それで相殺をして保証債務の履行を拒むことができる。

2、保証人は、主たる債務者が有する抗弁権(同時履行の抗弁権や支払い猶予の抗弁権など)を行使して保証債務の履行を拒むことができる。


6、主たる債務者又は保証人に生じた事由の効力

(1) 主たる債務者に生じた事由の効力
 
主たる債務者について生じた事由は、(保証債務の内容を重くするものではない限り)すべて保証人に効力が及ぶ。(保証債務の付従性による)

(2) 保証人に生じた事由の効力

保証人が弁済(代物弁済や供託も含む)や相殺・更改をした場合は、主たる債務も消滅するが、それ以外の保証人に生じた事由は、主たる債務者に効力を及ぼさない。
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