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 意思表示

[ 要点 ]


◆詐欺による意思表示の取消は、善意の第三者に対向することができない。

◆強迫による意思表示の取消は、善意の第三者に対抗することができる。

◆土地がA  , B , Cと順次譲渡され、Cが登記を済ませた場合、Aが詐欺を理由にAB間の契約を取り消したときは、Aは善意のCに対抗できない。

◆土地がA  , B , Cと順次譲渡され、Cが登記を済ませた場合、Aが強迫を理由にAB間の契約を取り消したときには、Aは善意のCに対抗できる。

◆Aは、第三者Dの詐欺によりBの所有する土地を買ってしまったが、売り主Bに対して、この意思表示を常に取り消すことができるとは限らない。
 



1、意思表示制度とは。

契約を締結するか否かについては、誰からも強制されず、自分の自由な意思によって決定することができる。しかし、この自由な意思が、他人などの力によってねじ曲げられてしまったり、自分が思ったことと相手に言ったことが違ったりしていたらどうなるであろうか。

これが意思表示制度の問題であり、自由な意思がねじ曲げられて契約などをしてしまった場合には、契約などは有効とはならず、無効になったり、取り消すことができるようになるという制度のことである。


2、意思表示がうまくいかない場合の種類

意思表示がうまくいかない場合の種類には、他人によって自分の意思がねじ曲げられてしまう詐欺、強迫と自分の思ったことと相手に言ったことが一致していない心裡留保、虚偽表示、錯誤の5つがある。


3、詐欺・強迫

詐欺とは、例えばBがAに「あなたの土地の隣にゴミ処理場が建設されることになった」とだまして、土地を売らせる場合である。強迫による契約とは、例えば、BがAに「あなたの土地を私に売らなければ、秘密をばらしてやる。」と脅して土地を売らせる場合である。

この場合、断ることが可能なため契約の意思がなかったとは言えない。そのため契約を無効とる必要はなく、取り消すことが認められている。


4、詐欺・強迫による取消と第三者

例えばA所有の土地が、A→B→Cと順次売却されたが、AB間の契約がBの詐欺や強迫により取り消された場合に、AB間の契約は、ばじめから無効だったものとされるため、Bは初めから土地所有権を有せず、なんの権利のない者だったことになる。

したがって、Bかに土地を買ったCも土地所有権を取得できず、Aは、自分が土地の所有者であるとして、Cに土地の返還を請求できることになる。

しかし、この結論を常に認めることは、Cが善意の場合は、著しくCに酷である。そこで、例外的に、Aが詐欺を理由にAB間の契約を取り消した場合には、Cは土地の所有権を取得できるものとした。

以上のことを民法は、詐欺による契約などの取消は、善意の第三者に対抗することができないが、強迫による契約などの取消は、善意の第三者にも対抗することができるとした。

ここで対抗するとは、主張するという意味である。善意とは、知らないことをいい、悪意とは知っていることを言う。また、第三者とは、当事者以外の者という意味で、この場合は、上記のC意味する。


3、第三者による詐欺・強迫

いままでの例は、契約の相手方であるB(買い主)がAに詐欺や強迫をした場合であるが、第三者の詐欺・強迫とは、契約の相手方以外の者がAに詐欺や強迫をして、Bに土地を売らせた場合である。

第三者(D)が詐欺をした場合には、被被害者(A)は、契約の相手方(B)が詐欺事実を知っていた場合に限り、契約を取り消すことができる。したがって、Bが善意の場合には、取り消すことはできない。

第三者(D)が強迫をした場合には、被被害者(A)は、契約の相手方(B)が強迫の事実を知っていたか否かに関わらず、、契約を取り消すことができる。

第三者(D)が詐欺をした場合には、Aには、無条件に取消が認められない。Aの取消を認めると、相手方(B)の期待を裏切ることになるためである。

そこで、第三者の詐欺の場合には、相手方が悪意の場合に限って、Aに取消が認められている。





「問」A所有の土地が,AからB,BからCへと売り渡され、移転登記も完了している。この場合、民法の規定によれば、次の記述のうち正しいものはどれでしょうか?
 


1、Aは、Bに詐欺されて土地を売ったので、その売買契約を取消した場合、そのことを善意のCに対し対抗することができる。
 


2、Aは、Bに土地を売ったとき未成年者で、かつ、法定代理人の同意を得ていなかったので、その売買契約を取消した場合、そのことを善意のCに対し対抗することができない。
 


3、Aは、Bが売買代金を支払わないので、その売買契約を解除した場合、そのことを悪意のCに対し対抗することができる。
 


4、Aは、Bに強迫されて土地を売ったので、その売買契約を取消した場合、そのことを善意のCに対し対抗することができる。
 


5,AB間の契約が通謀虚偽表示であった場合は、その契約は無効で、その無効を善意のCには対抗できない。Cが保護されるためには、登記や無過失が必要である。
 
 
 
 
 
「解答」正解は4です。まずは96条「詐欺又は脅迫」を確認しましょう。
 
 
 
第96条【詐欺又は強迫】

1項
詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。

2項 
相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。

3項 
前2項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。

 
 
 

強迫による意思表示の取り消しは、善意の第三者に対抗できます。
 
「善意の第三者に対抗できる」、「善意の第三者に対抗できる」、「善意の第三者に対抗できる」!
 

詐欺・強迫の第三者の違いは、(★★★ここも大事でよ!)

■詐欺による意思表示の取り消しは「善意の第三者に対抗できません。」
■強迫による意思表示の取り消しは「善意の第三者に対抗できます。」




・ Aは、Bに詐欺されて土地を売りましたが、その売買契約を取消した場合、そのことを善意のCに対し対抗することはできません。

※詐欺による意思表示の取り消しは、善意の第三者に対抗できません。


・ Aは、Bに土地を売ったとき未成年者で、かつ、法定代理人の同意を得ていなかったので、その売買契約を取消した場合でも、そのことを善意のCに対し対抗することができます。

※制限能力を理由とする意思表示の取り消しは、善意の第三者にも対抗できます。
 


・ Aは、Bが売買代金を支払わないので、その売買契約を解除した場合、そのことを悪意のCに対し対抗することはできません。

※Aは悪意のCに対抗できません。契約を解除した場合、第三者(C)の権利を害することができないのです。



・ AB間の契約が通謀虚偽表示であった場合は、その契約は無効で、その無効を善意のCには対抗できません。
 
Cが保護されるためには、登記や無過失は要求されません。

※AB間の契約が通謀虚偽表示であった場合は、その契約は無効ですが、その無効を善意のCには対抗できません。







意思表示(2)


[ 要点 ]


◆表意者が真意でないことを知りながら行った意思表示は、相手方が表意者の真意を知っていたときには無効となる。

◆AがBに「自動車」を譲ると真意でなく言ったとき、Bはその言葉が真意でないと知っている場合には、AからBに自動車を譲り渡す義務は生じない。

◆相手方と通じて行った虚偽の意思表示はその当事者間においても無効である。

◆錯誤による意思表示については、表意者に重大な過失がある場合には、表意者が自らその無効を主張できなくなる。
 



1、心裡留保

(1) 意味

心裡留保とは、契約を締結する意思がないにも関わらず、あるいはそのような内容の契約を締結する意思がないにも関わらず、契約をするという場合である。

例えば、Aはビデオカメラを売る意思がないのに、Bに「ビデオカメラを売る」という場合や10万円でなければ売るつもりはないのに、Bに「1万円で売る。」という場合である。

(2) 心裡留保による契約の効力

心裡留保による契約も相手方を保護するために、有効である。しかし、、相手方(上例のB)が、その真意(Aに売るつもりがないということを)を知り、又は有過失の場合は、相手方を保護する必要はないので、契約は無効ということになる。

ここで、「有過失」という言葉が出てきたが、「有過失」とは、注意すれば知ることができたことという意味である。逆に注意しても知り得なかったことを「無過失」という。

以上をまとめてみると、心裡留保は、原則として有効であるが、例外的に、相手方が悪意又は有過失の場合は無効ということは、結局、相手方が善意かつ無過失(善意・無過失)の場合は有効ということになる。


2、虚偽表示

(1) 意味

虚偽表示とは、相手方と通謀して(ぐるになって)する虚偽(ウソ・でたらめ)の契約ということである。例えば、借金が返済できなくなったAが、債権者Cから自分の財産の差し押さえを免れるために、友人のBとぐるになって、唯一の財産である土地についてみせかけの売買契約をする場合である。(通常は、本当に契約がなされたように見せかけるために土地などの登記もBに移転する)。

(2) 虚偽表示による契約の効力

虚偽表示による契約は、上例の場合、AもBも契約をする意思はなく、またAとBが通帳しているため、Bの保護ということも問題にならないため、虚偽表示による契約は無効とされている。

虚偽表示は、心裡留保と類似しているが、心裡留保の場合はAが単独で売る意思もないのにBに売るという場合であるが、虚偽表示の場合は、AとBがぐるになって、AもBもうる意思も買う意思もないのに、売買契約をする場合である。


3、錯誤

(1) 意味

錯誤による契約とは、勘違いをしてする契約のことをいう。例えば、Aは、カメラを10万円でうるつもりだったのに、うっかりして1万円で売るとBに言ってしまった場合や、偽物を有名ブランドのバックと勘違いしてAがBから買ってしまった場合などである。

いづれの場合も、真意と表示は、一致しておらず、表意者(錯誤による意思表示をしたAのこと)がそのことに気づいてはいない。表意者がこの点に気づいているかいないかが、前述の心裡留保との違いである。

(2) 錯誤による契約の効力

錯誤による契約は、そもそも契約をする意思がなかったのであるから無効となるが、無効であると認められるためには、ア、法律行為の要素に錯誤があること、イ、表意者に過失(重過失)がなかったことの2つの要件を満たす必要がある。

上記のアで、「法律行為の要素に錯誤があること」という表現があるが、これは、ささいな錯誤の場合でも、契約を無効とすると、契約の相手方の期待を著しく裏切ることになる。

そこで、「契約の重要な部分に錯誤があった」こと、換言すると、そのような錯誤が認められなかったなら表意者も一般人もそのような契約をしなかったであろうと認められる場合を意味する。

次ぎに、イで「重過失」という言葉がでてきているが、「重過失」とは、不注意の程度が著しいこと。つまり、ちょっと注意すれば錯誤に気づいたと認められる場合である。




意思表示(3)


[ 要点 ]


◆Aは、譲渡の意思がないのに、債権者の差し押さえを免れるため、Bと通じてA所有の土地をBの名義にした。Cは、その事実を知らずにその土地を購入した場合に、その土地はC所有のものとなる。

◆不動産の真実の所有者Aの意思により、Bの承諾なくしてBの名義の不実の登記がなされ、その後の当該不動産がBから悪意のCに譲渡され、さらにCから善意のDに譲渡された。この場合、Dは、Aとの関係で善意の第三者とし保護され、当該不動産の所有権を取得する。

◆賭博の用に供される事を知って行う金銭消費貸借契約は、無効である。

◆和解は、その内容が、公的良俗に反する場合は無効である。
 



1、心裡留保・虚偽表示・錯誤による契約の無効と第三者

例えば、A所有の土地がA→B→Cと順次売却されたが、AB間の契約が錯誤等により無効となった場合は、Bは、土地所有権を取得できず、無権利者ということになる。

したがって、Bから土地を買ったCも土地所有権を取得できないということになる。

しかし、この結論を認めることは、Cが善意の場合には、著しくCに酷である。そこで、詐欺を理由とした契約の取消を善意の第三者に対抗することができないのと同様に、例外的に、Aにも落ち度があるので、虚偽表示や心裡留保によりAB間の契約が無効となった場合には、Cは土地の所有権を取得できるものとされている。

すなわち、虚偽表示や心裡留保による契約の無効は、善意の第三者に対抗することはできない、というものである。(なお、心裡留保の規定には、当該規定はないが通説では認められている。)


2、虚偽表示による無効の場合で、第三者が善意で取得者が悪意の場合。

次ぎの以下の例を考えて頂きたい。A所有の土地がA→B→Cと順次売却され、善意のCがさらに、悪意のDに売却した場合、Dはその土地を取得できるだろうか?

通説によると、この場合には、Cは善意なので、その土地の所有者であることは問題ない。そこで、たまたま無効であることを知っていたDにその土地を売却しても何ら問題はない。したがって、転得者Dは、たとえ悪意であっても、土地の所有権を取得できるとしている。


3、虚偽表示による無効の場合で、第三者が悪意、転得者が善
 意の場合。

上例で、Cが悪意でDが善意の場合は、Dは土地の所有権を取得できるであろうか?

この場合の判例は、転得者Dも第三者に含まれるとして、たとえ、Cが悪意であったとしても、Dが善意であれば、Cは保護されないが、Dは保護されるとしている。

これは、民法94条2項は虚偽の外形を信頼した者を保護する趣旨の規定なので、転得者を除く意味はないと判断したからである。


4、その他の無効になる契約など。

いままでは意思表示による無効を取り扱ってきたが、以下では、それ以外にも契約が無効となる場合を解説していく。

(1) 公的良俗に違反する契約

公的良俗に違反する契約とは、殺人の請負契約、人身売買など社会的妥当性を欠く契約のことである。

例えば、AがCの殺害をBに依頼した場合、これを有効とするときは、Aは、BにCを殺害するように請求でき、Bはその義務を負うという不合理な結果が生じることになるため、公的良俗に違反する契約は無効とされている。


(2) 原始的に不能な契約

原始的不能とは、例えば、AB間で別荘の売買契約を締結したところ、地震や落雷など、すでに別荘が滅失していた場合である。

実現不可能な契約を締結しても、意味はないし、そもそも実現できないことを債権者に要求することは不合理であるため、契約は無効とされる。
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