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 権利能力、意思能力、制限能力者

権利能力


[ 要点 ]


◆未成年が単に権利を得、または義務を免れる法律行為を行う場合には、法定代理人の同意を要しない。

◆未成年者は、法定代理人が目的を定めて、処分を許した財産については、その目的の範囲内であれば、随意にこれを処分することができる。

◆未成年者は、法定代理人から営業を許可された場合には、その営業に関しては成年者と同一の能力を有する。
 




1、制限能力の意味

出生をすると権利義務の主体となれる地位や資格を得ることができるという「権利能力」が備わる。そうすると、契約自由の原則により、誰とどのような内容の契約を締結しようと、それは各人の自由となる。

しかし、世の中には、権利義務の主体となれる者であっても、子供や精神病者など判断能力の不十分な者もおり、その者にとって、不利な契約を押しつけられ、いいように利用されることになってしまうことも考えられる。

そこで、自分の行為の結果を認識・判断できることの精神的能力があるという「意思能力」を有しない者の契約は無効である、という原則が、近代法の原則としてある。しかし、意思能力があるかどうかの判断の証明は非常に難しいので、民法は、このようなことになってしまいそうな者を類型化して規定した。

このような人を「制限能力者」とし、これらの者が契約をした場合でも、後からその契約を取り消すことかできるとして、保護することにした。


2、権利能力

権利能力は、人間(民法では「自然人」という)の他に、法人にも認めらる。

権利能力の取得は出生に始まるので、胎児には、権利能力は原則として認められないが、不法行為による損害賠償請求、相続、遺贈の3つについては、すでにうまれたものとして認められる。


3、意思能力

意思能力を有しない者とは、幼児や高度の精神病者になど、契約の意味を理解できる能力を有しない者のことである。飲酒で泥酔状態にある者も、その間は意思能力を有しない者である。

これらの者は、そもそも契約を締結する意思があるとは言えないため、これらの契約は、無効とされている。逆に言うと、意思能力(だいたい7〜10歳程度の子供の能力)者が締結した契約でなければ、契約は有効に成立しないということになる。


4、制限能力者の種類

民法は、意思能力を有しない者や不十分でありそうな者を類型化して制限能力者として、これらの者の行為能力(単独で、問題のない完全な契約などができる能力)を制限して、これらの者が単独で契約などをした場合には、その契約を取り消すことができるようにして、その保護を図ることにしている。

制限能力者には、「未成年」、「成年被後見人」、「被保佐人」、「被補助人」がある。


(1) 未成年者

未成年者とは、満20歳未満の者のことをいう。未成年者も保護者の同意を得て、婚姻できるが、(男性18歳、女性16歳以上)、満20歳未満の者でも、結婚すると成年者として扱われる。

未成年者が保護者の同意を得ないで、勝手に契約をしたときは、その契約を未成年者本人又は保護者が取り消すことができる。

しかし、次の場合は、未成年者も、1人だけで、自由に契約することができる。

・単に権利を取得するだけの契約(贈与(ただで物をもらう契約)を受ける場合など)、・単に義務を免れる契約(債務の免除(借金を棒引きしてもらう契約)など)を受ける場合など、・保護者から許された財産の処分(小遣いで物を買う場合など)、・保護者から営業を許可された場合のその営業に関する契約(親から未成年者が雑貨屋をすることを許可されたときには、その雑貨屋に関する契約(店を借りる契約、従業員を雇う契約、商品を仕入れる契約など)は、全部1だけでできるようになる。

なお、ここでの保護者とは、原則は、親権者(親のこと)がなるが、親のいない子供には、保護者として、家庭裁判所により未成年後見人が選任される。

未成年者の保護者は、法定代理人と呼ばれる。

保護者は、未成年者が契約をする場合には、それに同意を与えたり、未成年者に代わって契約をしたり、未成年者が同意を得ないで契約などをした場合にその契約などを取り消したり、そり取り消せる行為を取り消さないことに決めて、確定的に有効なものとしたりという権限ほもちつ。

それぞれに、・同意権、・代理権、・取消権、・追認権 という。




制限能力者(2)


[ 要点 ]


◆成年被後見人が成年後見人の同意を得て行った財産上の法律行為は、取り消すことができる。

◆被保佐人が、保佐人の同意を得ることなく、自己が居住するための住宅を建築するために土地の購入の申し込みをなすこ行為は、取り消すことができる。
 




1、成年被後見人

成年被後見人は、重い痴呆や知的障害などの精神上の障害により事理を弁識する能力(判断能力)を欠く常況にある者であり、本人・一定範囲の家族・検察官などの一定の者の請求により、家庭裁判所によって後見開始の審理を受けた者のことである。

成年被後見人は、まったくといっていいほど判断能力がないため、成年被後見人のした契約は、原則として取り消すことができる。

ただし、日用品の購入佐の他の日常生活に関する行為については除かれる。

なお、ここでの保護者は、成年後見人と言われる。法定代理人という場合もある。

保護者の権限としては、代理権、取消権、追認権などがあるが、同意権はない。


2、被保佐人

被保佐人は、精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分な者であり、本人・一定範囲の家族・検察官などの一定の者の請求により、家庭裁判所によって保佐開始の審判を受けた者のことである。

被保佐人は、成年被後見人とは異なり、ある程度の判断能力があるため、原則として、単独で有効に契約をすることができるが、以下のような例外がある。

以下の行為を行うには、保護者の同意を得なければならなず、保護者の同意を得ずに行ったときは、被保佐人はこれを取り消すことができる。

・元本を受け取ったり、これを利用すること。
・借財(借金すること)又は保証人となること。
・不動産(土地や建物)又は重要な財産(不動産以外の物のこと)の取引
・訴訟行為(訴えを起こすこと)
・贈与、和解、又は仲裁契約をすること。
・相続の承認、放棄又は、遺産の分割をすること。
・贈与・遺贈(遺言による贈与)を拒絶したり、又は負担付の贈与・遺贈を受け取ること。(負担のない贈与を受け取ることは単独でできる)
・新築、改築、増築、又は大修繕を目的とする請負契約をすること。
・土地について5年、建物について3年を越える賃貸借をすること。
・家庭裁判所の指定した行為

なお、ここでの保護者とは、保佐人と言われる。

保護者の権限としては、上記の行為について、すべて同意権、取消権、追認権、がある。また、一定の者の請求により代理権を付与する旨の審判があったときには、代理権を有する。

ただし、この請求を本人以外がした場合には本人の同意がないと審判できない。

なお、代理権の範囲については、同意権の範囲である民法12条1項各号に定められた行為に限られない。


3、被補助人

被補助人は、精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な者であり、本人・一定範囲の家族・検察官などの一定の者の請求により、家庭裁判所によって補助開始の審判を受けた者のことである。

本人以外の者の請求による場合には、本人の同意が必要になる。

被補助人は、軽度の精神障害がある程度なので、民法12条1項の各号の被保佐人の行為で同意ほ必要とするものの、一部に限り保護者の同意などを必要とする制度である。

なお、ここでの保護者とは、補助人と言われる。

保護者の権限としては、同意権付与の審判があると同意権、同意権が付与されると取消権と追認権がある。

被保佐人と同様に、一定の者の請求により代理権を付与する旨の審判があったときには代理権を有し、請求を本人以外がした場合には本人の同意がないと審判できない。

なお、代理権の範囲については、同意権の範囲である民法12条1項各号に定められた行為に限られない。




制限能力者(3)


[ 要点 ]


◆法定代理人の同意なくしてなされた未成年者の財産行為で、相手方が法定代理人に対して1ヶ月以上の期間内に当該財産行為を追認するか否か解答すべき旨を催告したが、解答が発せられなかった場合のその未成年者の行為は、追認したものとみなされる。

◆制限能力者が相手方に行為能力があると信じさせるために詐術を用いたときには、制限能力者は、制限能力を理由にその法律行為を取り消すことができない。
  




1、制限能力者と取引した相手方の保護

制限能力者制度は、制限能力者を保護するための制度なので、契約などをした相手方にとっては、いつ取り消されるかと不安定な立場にたたされてしまう。

そこで、相手方の保護についても民法は規定している。以下では、催告権と詐術による取消権の排除について解説していくます。


(1) 制限能力者の相手方の催告権

例えば、保護者の同意を得ない未成年者AからBが建物を建てる目的で土地を購入した場合、契約は有効であり、Bは土地の所有権を取得できるが、後から取り消される恐れがあるため、実際、建物を建てることはできないという立場に立たされることになる。(建物を建ててしまったときは、建物を取り壊して土地を返還しなければならなくなるため。)

そこで、相手方は、1ヶ月以上の相当な期間を定めて、契約を取り消すのか、追認するのかを解答すべき旨を催告でき、解答があった場合にはそれによるが、解答が無かったときは、法律により契約の追認又は取消があったとされ、相手方の地位を確実にするために認められた制度である。

・催告の相手方
相手方は、誰に催告するかについては、未成年者、成年被後見人については、その法定代理人が催告の相手方となり、被保佐人、被補助人については、本人又は保佐人、補助人である。

なお、能力者になった後については、本人に催告する。


・解答がない場合の扱い
催告をしたにも関わらず、解答がない場合の扱いはどうなるのか。

ア、追認したこととなる場合。
この場合には、催告の相手方が追認をすることができる能力がある場合に該当しなければならないので、制限能力者が能力者になった後の場合と、制限能力者である場合に法定代理人、保佐人、補助人に催告した場合である。

イ、取り消したものとみなされる場合
被補佐人、被補助人が催告の相手である場合には、1ヶ月以上で定められた期間内に、保佐人、補助人の追認を得るべき旨を催告することができるが、その期間内に追認を得た通知をしない場合には、取り消したものとみなされる。

また、未成年者の法定代理人が催告の相手方であるが、この法定代理人がその権限を濫用しそうな場合に後見監督人という者をさらに置くことができるが、この後見監督人が置かれている場合に、法定代理人が未成年者の代わりに民法12条1項に該当するような重要な契約などをする場合には、後見監督人の同意が必要とされている。

この同意に必要な一定の通知をしない場合には、取り消したものとみなされる。


(2) 制限能力者の詐術

制限能力者が、自分は能力者であるとか、保護者の同意を得たなどと相手方に詐術(ウソをつくこと)を用いて契約をした場合には、契約を取り消すことはできない。


2、失踪宣言

失踪宣言とは、行方不明になった者の生死不明の状態が一定期間継続する場合に、この者を死亡したものとみなして、各種の法律関係を終了させようとする制度をいう。

この一定の期間には2つの種類があり、「普通失踪」と「特別失踪」がある。

普通失踪は、通常の失踪であり、生存が確認された最後のときから7年間を経過すると利害関係人の請求により家庭裁判所が失踪宣告をする。

特別失踪は、船が沈没したり、航空機が墜落したりなどの危難に遭遇したときに生死不明になった場合である。この場合には、その危難が去った時から1年で利害関係人の請求により家庭裁判所が失踪宣告をする。






○か×か?

被保佐人は、保佐人の同意またはこれに代わる家庭裁判所の許可を得ないで自己の所有する自動車を他に売却した場合であっても、その自動車が善意の第三者に転売された後は、自己が締結した売買契約を取り消すことができない。


被保佐人のする法律行為については、一部重要な行為について、保佐人の同意またはこれに代わる家庭裁判所の許可が必要となります。(第13条1項各号)


第13条【保佐人の同意を要する行為等】

1項
被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。ただし、第9条ただし書に規定する行為については、この限りでない。

1.元本を領収し、又は利用すること。
2.借財又は保証をすること。
3.不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
4.訴訟行為をすること。
5.贈与、和解又は仲裁合意(仲裁法(平成15年法律第138号)第2条第1項に規定する仲裁合意をいう。)をすること。
6.相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。
7.贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。
8.新築、改築、増築又は大修繕をすること。
9.第602条に定める期間を超える賃貸借をすること。



そして、この同意または許可がない行為は、取消をすることができます。

この同意または許可が必要な法律行為の具体的な内容については、イメージとして覚えてしまうと、後々楽になると思います。

さて、この肢の自動車の売却ですが、自動車は重要な財産と判断できますので、同条第1項第3号より、本来、保佐人の同意が必要な行為であるということになります。

よって、この売却行為は取消しすることができるものであり、この取消権は、たとえ第三者に転売された後であっても、行使することができます。

つまり、(善意の)第三者の保護よりも、被保佐人の保護を優先していることになります。
 
 
 
 
 
○か×か?


銀行との間において金銭消費貸借契約を締結した被保佐人が、その銀行から2ヶ月以内に保佐人の追認を得べき旨の催告を受けたにもかかわらず、何らの通知もしなかった場合には、その契約は、追認されたものとみなされる。


誤りです。

制限能力者である4種類の人がした法律行為について、相手方は催告をすることができます。


第19条【審判相互の関係】

1項
後見開始の審判をする場合において、本人が被保佐人又は被補助人であるときは、家庭裁判所は、その本人に係る保佐開始又は補助開始の審判を取り消さなければならない。

2項 
前項の規定は、保佐開始の審判をする場合において本人が成年被後見人若しくは被補助人であるとき、又は補助開始の審判をする場合において本人が成年被後見人若しくは被保佐人であるときについて準用する。



つまり、いつ取り消されるかが分からない状況にいつまでも相手方を置いておくのは、どうもまずいだろうということですので、相手方に催告権を与えて、取り消すかどうかを確定させようというものです。


第20条 【制限行為能力者の相手方の催告権】

1項
制限行為能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人及び第17条第1項の審判を受けた被補助人をいう。以下同じ。)の相手方は、その制限行為能力者が行為能力者(行為能力の制限を受けない者をいう。以下同じ。)となった後、その者に対し、1箇月以上の期間を定めて、その期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その者がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなす。

2項
制限行為能力者の相手方が、制限行為能力者が行為能力者とならない間に、その法定代理人、保佐人又は補助人に対し、その権限内の行為について前項に規定する催告をした場合において、これらの者が同項の期間内に確答を発しないときも、同項後段と同様とする。

3項 
特別の方式を要する行為については、前2項の期間内にその方式を具備した旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。

4項 
制限行為能力者の相手方は、被保佐人又は第17条第1項の審判を受けた被補助人に対しては、第1項の期間内にその保佐人又は補助人の追認を得るべき旨の催告をすることができる。この場合において、その被保佐人又は被補助人がその期間内にその追認を得た旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。



被保佐人が能力者となる前の状況において、当該被保佐人との法律行為をした相手方が、1ヶ月以上の期間を定めて、その期間内に、保佐人の追認を得る旨を催告をすることができるという、条文に即した催告をしています。

この催告は有効です。


この催告に対して、保佐人の追認を得た旨の通知を発しなかった場合にはどうなってしまうのかということですが、これは、追認を認めなかった、つまり当該法律行為を取り消したものとみなされます。

これは、この肢の金銭消費貸借契約の締結は、第12条第1項第2号の「借財をなすこと」に該当し、本来ならば保佐人の許可を得てからしなければならない法律行為ですので、明確に許可(この場合は追認)を得られない以上、有効にはできないためです。

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