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 民 法

契約の成立



[ 要点 ]


◆申し込みと承諾の合致(合意)によって契約が成立する。

◆承諾の期間を定めて契約の申し込みをしたときは、期間経過まで申し込みは取り消すことができない。

◆承諾の期間を定めないで、契約の申し込みをしたときには、相当な期間経過するまで取り消すことができない。

◆承諾の期間に遅延した承諾は、申込者によってあらたな申し込みとみなすことができる。

◆承諾者が契約の申し込みに条件をつけ、その他の変更を加えて承諾したときは、その申し込みを拒絶し、あらたな申し込みをしたものとみなされる。

◆隔地者間の契約は承諾の通知を発した時に成立する。
 




1、契約の成立と権利変動

権利関係を動かす(発生・変更・消滅させる)原因として最も重要なのは契約である。

契約の他に、単独行為や合同行為といったもの、時効、不法行為、不当利益・事務管理といったものがある。

ここでは、契約に関して、その大まかな流れをみていくことで、民法(財産法)についての概要をみていく。


2、契約の成立

例えば、売り主が自分の所有する土地について買い主との間で売買契約を締結すると、法律的には以下のようなことがおこる。1つの事実関係ではあるが、法律的には複数の観点からの動きがある。


(1) 債権について

売り主から買い主に対して「代金を支払え」という内容の債権が生じると同時に、買い主から売り主に対して「土地を引き渡せ」という債権が生じる。

(2) 物権について

買い主が持っていた土地に関する所有権が売り主に移る(ただし、現実に引き渡しがなされているわけではない)。

これらの権利関係は、目に見えないものである。この後、契約によって変動した権利関係に現実の状態を合わせていくという段階に入っていく。通常はその内容が実現されるが、うまくいかない場合もでてくる。

債務不履行、危険負担、売り主の担保責任といった契約や債権にまつわるトラブル発生時の対応策が準備されている。

さらに、契約が無効として扱われる場合や、一応有効ではあるが、一定の場合、「取り消される」ことで契約がはじめに遡って効力を失う場合がある。


3、契約成立のメカニズム

契約の成立には、少なくとも、意思表示(一定の法律効果が生じることを意図して発表すること)の合致が必要であるが、契約の種類によっては、加えて物の引き渡しを要する場合もある。

契約に関してはこの意思表示を特に「申し込み」と「承諾」という。先になされた意思表示が申し込みで、それに対する返事が承諾であるという程度に理解すればよい。


(1) 申し込みについて

申し込みは、相手方の承諾を受けて契約を成立させようとする意思表示である。承諾期間を定めた申し込みは、期間内は撤回することができない。申し込み期間内に承諾の通知を受けなかった場合は、申し込みが執行するので、その後承諾を受けても契約は成立しないことになる。

この場合でもこれを新たな申し込みとして扱うこともできるので、もともと申し込んだ者がさらに意思表示すれば契約は成立する。

これに対して、承諾期間を定めなかったからといって、申し込みをすぐに引っ込めてもよいのかどうかについては、そうはいかない。相当な期間は撤回できないのである。

申し込みが手紙などを通じて遠隔地者に対してなされる場合には、到達によって申し込みとしての効力を生じることになるが、発信到達前に申込者が死亡した場合でも、到達によって効力が生じるのが原則である。

しかし、申込者が反対の意思表示をしていた場合や、相手方が死亡の事実を知っていた場合は、効力を生じなかったり、撤回することができる。


(2) 承諾について

承諾は、申し込みに対して、契約を成立させようとしてなされる意思表示である。

承認の期間に遅延した承認は、申込者においてあらたな申し込みとみなすことができる。

申し込みに条件を付けたり、変更を加えたりした承諾は申し込みの拒絶とともにあらたな申し込みをしたものとみなされる。

遠隔地者の契約は承諾を発信したときに設立する。(ただし、承諾期間がある場合で、期間内に到達しなければ契約は成立しなかったこととなる。)


契約の種類、債権の消滅(1)


[ 要点 ]


◆債権の目的が特定物の引き渡しであるときには、弁済者は、引き渡すべき時の現状で引き渡せばよい。

◆特約の無い限り、特定物の引き渡しにあたっては、債権発生時その物の存在した場所において行い、その他の弁済にあたっては債権者の現時の住所において行うことを要する。

◆弁済の費用は、債権者がその費用を増加したときを除き、特約のな い限り、債務者が負担する。

◆弁済の額が元本、利息及び費用の合計額に達しないときは、まず費用に充当し準じ、利息及び元本に充当しなければならない。
 




1、契約の種類

日頃、物を買ったり売ったりすることが頻繁になされているが、これは法律的に言えば、「売買契約」がなされたということになる。売買契約の他にも民法上は典型的な契約の種類として13種あげられている。(典型契約とか有名契約といわれる)。


(1) 諾成契約か要物契約か

当事者の合意のみで設立する(諾成)か合意に加えて目的物の引き渡しを要するか(要物)。例えば、売買契約は合意のみで成立する(一般的には証拠を残すため契約書が作られるが、口約束だけでも契約は成立したことになる)。

これに対し消費貸借は合意の上金銭等を借り主に引き渡したところで契約が成立する。


(2) 有償契約か無償契約か

当事者がお互いに対価的経済的支出を負う(有償)か、当事者が経済的支出を負わない・経済的支出を負うが対価性がない(無償)。


(3) 双務契約か片務契約か

当事者がお互いに義務を負う(双務)か、一方のみの当事者が義務を負うか・お互いに義務を負うが対価的でない(片務)。双務契約はすべて有償契約であるが、有償契約には双務契約と片務契約がある。

なお、民法上、典型的な契約パターンが示されているが、契約自由の原則があるので、当事者によって、これ以上の内容を持つ契約をすることはかまわない。(非典型契約とか無名契約と呼ばれる)。


2、債権の消滅(その1)

通常は債権の内容が実現されることで、その役目を果たして消滅することになる。場合によっては本来の内容と違った形でも債権が消滅するる債権が消滅する場合につき試験対策としては、弁済や相殺についてしっかりと理解・記憶する必要がある。

(1) 弁済(その1)

・目的物の引き渡し、弁済の費用
特定物(物の個性に着目して取引される物、例えば、建物や骨董品)の引き渡しは、引き渡しをなすべき時の現状で引き渡すことを有する。壊れた場合でもそのまま引き渡せばよい。

債務者の過失による場合は損害賠償請求できる。また、引き渡しは原則として債権発生当時その物の存在した場所で行われる。なお、特定物以外は原則として債権者の現時の住所に持参して行う。

弁済の費用は原則債務者が負担する。ただし、住所移転などで増加した費用は債権者が負担する。

なお、売買等の双務契約の契約締結の際の費用は当事者が折半する。

・弁済の証拠
弁済者は弁済の証拠とするために、受取証書の交付を請求できる。また、受取証書の交付と弁済は同時履行の関係にあるので、交付しなければ払わない等の主張ができる。

弁済につき、債権証書(借用書など)の返還請求権もあるが、弁済と同時履行の関係にはない。

・弁済の充当
債務者が同一の債権者にいくつか債務を負っているのに、(例えば、お金を50万、100万と2回借りた)、債務者が提供したものでは全部の債務を消滅させるこができない場合には、弁済者、受領者が指定するか、指定がない場合は、法定の基準による。

指定充当のときに、債務が元本の他に費用、利息が生じていて、弁済しても全部の債務を消滅できない場合、特約がなければ費用→利息→元本の順で充当しなければならない。

なお、法定充当について、

ア、弁済しなければならない期限(=弁済期)が到来しているものとしていないものがある場合には、到来しているものが優先。

イ、弁済期が到来している(いない)ものだけの場合は、弁済による利益の多いものが優先。(例:利息の有無、高低)

ウ、利益が同じなら、先に弁済期が到来するであろうものが優先。

エ、利益も弁済期の先後も同じなら、債務の額に応じて充当。




契約の種類、債権の消滅(2)


[ 要点 ]


◆債権の準占有者に対する弁済は、当該準占有者が善意無過失である場合、その効力を生じる。

◆弁済の提供は、債務の本旨に従った現実の提供であることを要し、債権者があらかじめ受領を拒んだ場合は口頭の提供で足りる。

◆利害関係を有しない第三者は、債務者の意思に反して、弁済をすることができない。

◆債務者のために弁済を行った者は、弁済と同時に債権者の承諾を得なければ、債権者に代位することはできない。

◆相殺は、当事者の一方から相手方に対してなす意思表示によって効力を生じ、相手方の承諾を必要としない。

◆相殺の意思表示は、相殺適状に達した時に遡ってその効力を生じる。

◆相殺の意思表示には、条件や期限を付けることができない。

◆相殺は双方の債務の履行地が異なるときでもすることができる。
 




1、弁済(その2)

(1) 弁済権限のない者への弁済等

・受領権限がない者への弁済は、効力がないのが原則であるが、債権者が利益を受けた限度で有効。

・債権の準占有(=自己のためにする意思を持って債権を行使する者)に対して、善意無過失(=知らないことに落ち度がない)でなした弁済は有効。なお、善意=知らない、悪意=知っている、という意味。

・真正な受領証書の持参人への弁済は、善意無過失であれば有効。

・弁済者が他人の物を引き渡した場合はさらに有効な弁済をしなければ、その物を取り戻すことはできない。

・譲渡の能力のない者(未成年者。、成年被後見人、被保佐人)の物の引き渡しは、取り消せうるものであっても、さらに有効な弁済をしなければ、弁済した物を取り戻せない。


(2) 第三者の弁済

弁済は第三者がすることもできるのが原則であるが、・性質上許されない場合、・当事者が反対の意思表示をしたとき、・利害関係のない第三者は債務者の意思に反して弁済できない、(逆に保証人等は利害関係のある第三者であり、債務者の意思に反しても、肩代わりができる。)

第三者が弁済をすると、債権者が有していた権利を代わって行使することができるようになる。これを弁済による代位という。

法定代位(=弁済をするに正当な利益を有する第三者が弁済した場合は、当然に代位する。)と任意代位(=正当な利益を有しない第三者の場合は、債権者の同意を得て代位する。)がある。


(3) 弁済の提供

弁済の提供は、債務者が、債権者が協力することですぐに弁済することができるようにするような状態を作ることである。

弁済の提供は、原則として「現実の提供」を要する。例えば、お金を弁済する場所へ持参するなとである。

また、債権者があらかじめ受領を拒んでいる場合や、債権者の協力が必要な場合は、弁済の準備をして、準備ができたことを通知(=口頭の提供)すればよい。


2、相殺

債務者が債権者に対し自分も同種の債権を有する場合、その債権と債務を対当額で消滅させる単独の意思表示である。相殺がなされると、両債権が現実に履行されなくとも、消滅する。したがって、履行地が異なる場合でも、相殺することで、実際に出向かなくてもよくなる。

両当事者間で、相殺をするとの意思表示する者が相手方に対して有している債権を自動債権、反対に、相手方が有する相殺の意思表示をする者に対する債権を受動債権という。

(1) 相殺の要件

相殺ができるのは、相殺適状(相殺ができる状況)となっている場合である。

・対立する債権がある。=時効によって債権が消滅しても、それ以前に相殺適状になっていれば相殺することができる。

・同種の債権である。=例えば、双方とも金銭を目的とする債権。

・両債権が弁済期にあることを要する(これに関しては、自動債権が弁済期にあれば、受動債権が弁済期になくてもその期限の利益を放棄して相殺できるとされる。)

・相殺を許す債権であること。

相殺が許されない場合として、当事者で相殺禁止特約がなされている場合(善意の第三者には対向できない)や、法律によって禁止されている場合がある。(不法行為によって生じた債権を受動債権とする相殺は禁止。賃金債権を受動債権とする相殺は禁止。支払いの禁止を受けた債権を受動債権とする相殺は禁止)。


(2) 相殺の意味

相殺は一方的な意思表示で行われ、意思表示に条件、期限を付けることができない。相殺は相殺適状に遡って、債権債務が消滅していたこととなる。
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