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損失補償
◆損失保障とは、適法な公権力の行使により特定人に生じた財産上の損失を、全体的な公平負担の検地から補償することをいう。
◆損失補償とは、土地収用法等個々の法律の規定をまって初めて認められるものであるが、そうでない場合には憲法の規定に基づいて直接請求することも可能である。
◆ため池の破壊・決壊を防ぐために堤とうでの耕作を禁止する場合には、たとえその規制が災害を防止し、公共の福祉を保持する上で社会生活上やむを得ないものであっても、損失補償は不要であるとするのが最高裁判所の判例である。
◆公共のために必要な制限であっても、一般的に受認すべきものとされる制限の範囲を超えて、財産上の特別の犠牲を課したと認められる場合には、補償請求をする余地がある。
◆土地収用法における損失の補償は、収用の前後を通じて被収用者の財産価値を等しくならしめるような完全な補償が必要であるというのが最高裁判所の判例である。
1、国家賠償と損失補償
国家賠償制度は、大きく分けて2つに分類され、適法な行政活動に基づく損失の補償である「損失補償」(憲法29条3項を根拠とする)と違法な行政活動に基づく損失の補償である「国家賠償」(憲法17条を根拠とする)がある。
前者には一般法が存在しないが、後者には国家賠償法という一般法がある。
2、損失補償の意味
損失補償とは、適法な公権力の行使により特定人に生じた財産上の損失を全体的な公平負担の見地から補償することをいう。
財産上の損失については、一般に社会生活において要求される受認限度を超えた「特別の犠牲」が生じた場合に限られる。
特別な犠牲とは、侵害行為が一般的なものか個別的なものか、さらに、侵害行為が財産権の本質的内容を侵害するかの2点の基準から判断される。
判例は、ため池保全条例で、ため池の破壊・決壊を防ぐために堤とうでの耕作を禁止するためには、ため池破壊・決壊等の災害を防止し、地方公共の秩序を維持し、住民及び滞在者の安全の保持といった公共の福祉を保持する上でやむを得ないものであり、そのような制約は、ため池の堤とうを使用し得る財産件を有する者が当然に受認しなければならない責務であり、現に耕作をしている者に対して損失補償の必要はないという判断を下した。
3、損失補償が根拠とする法律
損失補償には一般法はないので、個々の法律の規定に補償規定が委ねられる。
しかし、補償規定がない場合であっても憲法29条3項の規定に基づき直接請求することも可能である。
4、補償が必要とされる範囲
補償を必要とされる範囲は、財産権を取り上げる「公用収用」のみならず、財産権を取り上げるのでなく、一定の利用制限を課す「公用制限」も含んでいる。
また、行政財産の使用許可を受けていたが、公益上の理由でそれが撤回されてしまった場合、その使用権が喪失することによって生じた損害については、原則として補償は必要ではない。
5、補償の程度
損失補償が必要となった場合には、どの程度の補償が必要なのかが問題になる。
判例は、社会通念上「相当の補償」で足りる(農地改革に伴う補償。最大判昭和28年12月23日)というものと、「完全な補償」を必要とする(土地収用法の補償。最判昭和48年10月18日)ものがある。
6、支払方法
補償の支払いは、金銭補償が原則であるが、現物による補償も認められる。
また、金銭補償の場合には、補償金の支払いが財産権の収用・制限に先立ち、又はそれと同時に行わなければならないことまでを保障したものではない。
公権力の行使に基づく賠償責任
[ 要点 ]
◆公権力の行使にあたる公務員が、その職務を行うについて故意又は過失によって違法に他人に損害を加えた場合に限り、国又は公共団体に損害賠償責任が発生する。
◆国家賠償法1条1項に規定する「公務員」は、国家公務員又は地方公務員法に基づく公務員に限られず、公庫、公団などのいわゆる特殊法人の職員も含まれる。
◆国家賠償法1条の「職務を行うについて」の中には、作為の他に不作為も含まれる。
◆国又は公共団体の公務員による一連の職務上の行為の過程において他人に損害を生ぜしめた場合、その損害が具体的にどの公務員のどのような違法行為によるものであるかを特定することができなくても、国又は公共団体が損害賠償責任を負う場合がある。
◆国家賠償法1条1項に規定する「公権力の行使」は、行政作用の他にも、立法作用及び司法作用も含まれる場合がある。
◆国家賠償法1条の規定に基づき国又は公共団体が損害賠償した場合は、損害を加えた公務員に故意又は重大な過失があった場合に、国又は公共団体は、その公務員に対し、求償権を有する。
1、賠償責任の成立要件
国家賠償法1条1項は、「国又は公共団体の公権力の行使にあたる公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる」と規定している。
これを分けて考えてみると、(1)公務員の行為で、(2)その行為が公権力の行使に該当し、(3)その職務を行うについて、(4)故意又は過失により違法に他人に損害を与えることが賠償責任の要件となる。
(1) 公務員の行為で
国家公務員や地方公務員は当然ここでの公務員であるが、その他にも公権力を行使する権限を持つ者すべてを含んでいる。例えば、特殊法人や公共組合等の職員も民間人であるが、これに該当する。
(2) その行為が公権力の行使に該当し
「公権力の行使」とは、私経済作用(例えば、市営地下鉄の運営)と国家賠償法2条が適用される事項以外すべての行使作用についてその範囲となり、広く公益的な行政活動を含むと捉えられている。
原則として、違法の評価を受けないが、例外的に「裁判(裁判官が違法又は不要な目的をもって裁判をした場合など。)」や「立法(憲法の文言に明らかに違反しているのに国会が立法してしまうような例外的な場合に限る。)」が含まれる。
また、非権力的行為である「行政指導」、「公立学校の教育活動」なども含まれる。
また、作為にとどまらず、不作為も含まれている。
(3) その職務を行うについて、
その公務員が実際にその権限の中で職務を行っているかどうかではなく、外から客観的に職務を行っているように見えれば、職務を行っていることと取り扱っている。このことを「外形主義」という。
(4) 故意又は過失により違法に他人に損害を与えること
損害は発生したのだけれども、どの公務員がそれを引き起こしたのか不明な場合や、どの違法行為によって実際に損害が発生したのか特定できない、もしくは難しい場合がある。
そのような場合判例は、加害公務員や加害行為の特定を必ずしも必要とはしない。
実際に損害が発生して国家賠償を必要とするか否かは個々の裁判の中で決められることであるが、加害行為と損害との間には、相当因果関係(例 : Aという加害行為がなければ、Bとい損害は発生しなかったであろうという関係)が必要である。
また、損失保障と異なり、精神的損害の賠償も認めている。
2、国又は公共団体の責任
本来であれば、加害行為をした公務員が責任を負わなければならないが、この責任を国や公共団体が代わって負担していると考えられている。
したがって、加害行為をした公務員自身の責任はないので、被害者に対して直接責任は負わず、公務員個人を相手どった損害賠償請求の民事裁判を起こすことはできない。
3、国又は公共団体の求償権
国や公共団体が加害行為をした公務員に故意又は重大な過失がある場合には、求償権が有するというものである。
ここで要求しているのは、「重大な過失」であって、ただの「過失」ではない点に注意すること。
4、監督者と費用負担者が異なる場合
公務員の選任又は監督に当たる者と、公務員の給与その他の費用を負担する者が異なるときは、費用を負担する者もまた、損害を賠償する責任を負う。
公の営造物の設置管理の瑕疵に基づく損害の賠償責任、その他
[ 要点 ]
◆公の営造物の設置管理の瑕疵に基づく損害賠償責任は、公権力の行使に基づく損害賠償責任とは異なり、無過失責任主義に立脚するものである。
◆改修中の河川については段階的改修が認められ、水害発生部分のにつき改修がいまだ行われなかったことをもって、河川管理に瑕疵があったとは言えない。
◆国又は公共団体の無過失責任を認めるものであるが、不可抗力による損害に対しては、国又は公共団体は損害賠償の責任を負わない。
◆国家賠償法2条第1項の公の営造物には、公用又は公共の用に供している動産も含まれる。
◆国家賠償法第1条の規定は、外国人が被害者である場合にも、適用されることがある。
1、成立要件
国賠償法法2条1項は、「道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があったために他人に損害を生じたときには、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる」と規定している。
(1) 公の営造物の瑕疵による損害
公の営造物とは、「公物」のことであり、土地や建物などの不動産はもちろんのこと、動産も含まれ、視覚障害者用の点字ブロックや信号機なども含まれている。
(2) 設置又は管理の瑕疵
「営造物の設置又は管理の瑕疵とは、営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいい、これに基づく国又は公共団体の賠償責任については、その過失の存在を必要としないと解するのを相当とする。」としている。
また、「瑕疵の存否については、当該営造物の構造、用法、場所的環境及び利用状況等諸般の事情を総合考慮して、具体的個別的に判断するものである。」としている。
本試験では、道路管理の瑕疵と河川管理の瑕疵について過去出題されています。
・ 道路管理の瑕疵
道路への落石によって生じた損害については、故意、過失は不必要で、道路自体が通常有すべき安全性を欠いていれば損害賠償が認められる。また、たとえ予算上の制約から改修工事が先送りされていたとしても、国は損害賠償の責を逃れることはできないこととしている。
・ 河川管理の瑕疵
改修中の河川については、段階的改修が認められていて、水害発生部分につき改修が未だ行われていなかったことをもって、河川管理に瑕疵があったとはいえないとしている。
また、改修済みの河川については、その改修や整備がされた段階において想定された洪水から、当時の防災技術の水準に照らして通常予測し、かつ回避し得る水害を未然に防止するに足りる安全性を要求している。
2、他人に損害を生じた場合
この他人とは、営造物の利用者のみならず、利用者以外の第三者も含んでいると解される。
3、国又は公共団体の責任
公の営造物が通常有すべき安全性を欠いていれば、瑕疵があり、賠償責任が生じる。なお、台風など、不可抗力による自然災害については、原則として賠償責任は負わない。
4、国又は公共団体の求償権
他に責任を負うべき者がいた場合には求償権を認めている。ただし、この場合の求償権は他に責任を負うべき者の故意や重大な過失があるべきことを要件としていない。
5、設置・管理者と費用負担者が異なる場合
被害者はいずれに対しても、損害賠償請求可能(国家賠償法3条)である。
なお、補助金を交付している立場の者であっても、費用を負担する者と同等もしくはこれに近い費用を負担していて、実質的には事業を共同で執行していると認められている者で、当該営造物の瑕疵による危険を効果的に防止できる者については、賠償責任を負う。
6、民法及び民法以外の法律の適用
国家賠償法に規定のないものは、民法を適用し、その他の法律で別段定めがある場合には、その法律を適用する。
7、相互保証主義
例えば、外国人が被害者である場合には、その外国人の母国において日本人が被害者の場合に国家賠償するのであれば、日本においてもその外国人に国家賠償をしようということである。
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