[ 要点 ]
◆行政刑罰は、法令に特別の規定がある場合のほかは、原則として刑法総則が適用され、裁判所において刑事訴訟法の定める手続きにより科される。
◆行政刑罰は、普通地方公共団体の条例においても定めることができる。
◆行政上の秩序罰として国が過料を科すことがあるが、これは非訟事件手続法の定めるところにより地方裁判所において科されることとなる。
◆普通地方公共団体の過料は、普通地方公共団体の長が行政行為の形式でこれを科し、地方税の滞納処分の例により強制徴収される。
◆行政罰は、懲戒罰と併科することができる。
1、行政罰
行政罰とは、行政法上の義務違反に対し、一般統治権に基づき制裁として科される罰のことをいう。
また、行政罰は、罰を科すことには変わりはないので、罪刑法定主義の適用があり、(憲法31条)、常に法律の根拠を必要とし、法律の規定が無ければ行政罰を科することはできない。なお、法律により個別具体的に委任することはできるが、白紙委任は許されない。ただし、例外的に条例に対する罰則の一般的包括的委任がある。
また、二重処罰の禁止も適用されるので、同一の事実に関して、繰り返し行政罰を科すということはできない。
行政罰は、行政刑罰と行政上の秩序罰に分類される。
2、行政刑罰
行政刑罰とは、制裁される罰の中でも、刑法に刑名のある罰を科するものである。
刑法の刑名とは、罰の重い順に並べると、懲役→禁錮→罰金→拘留→科料となる。(刑法9条以下参照のこと)。この刑のほかに死刑というものもあるが、行政罰として死刑が科されるということは考えられないので除いて考える方が妥当だろう。
行政刑罰は、法令に特別の規定がある場合のほかに、原則として刑法総則が適用され、裁判所において刑事訴訟法の定める手続きにより科される。
3、行政上の秩序罰
行政法規違反に対して科される行政罰としての過料のことで、登記、登録、届出などの円滑な行政運営を確保するための義務違反をした者に科されるものである。
ここでの「過料」は、「科料」ではない点に注意すること。
刑法の適用がないため、法律に特別の定めがない限り、国が科す場合には、非訟資源手続法に基づいて地方裁判所で、普通地方公共団体が科す場合には、地方自治法に基づいてその長が行うこととなる。
なお、相手方が過料を納付しない場合には、国が科す場合には国税徴収法に規定する滞納処分の例により、普通地方公共団体の長が科す場合には、地方税の滞納処分の例により強制徴収される。
4、行政罰とその他の罰との相違点
(1) 刑事罰との違い
刑事罰の対象になる行為は、それ自体が反道義性、反社会性を有するものであるのに対し、行政罰の対象となる行為は、行政上の目的のためにする命令禁止に違反するてめに反社会性を有するものである。
したがって、例えば殺人のように、刑事罰は法の適用をまつまでもなく、反社会性などが認められるが、行政罰は法律の規定があることが前提となり、はじめて反社会性が認められるわけである。
(2) 懲戒罰との違い
行政罰は、一般統治権に基づいて科されるのに対して、懲戒罰は、特別権力関係(例…国と国家公務員の関係など)においてその秩序を乱した者に科せられるものである。
(3) 執行罰との違い
行政罰は、過去の義務違反に対して科されるのに対して、執行罰は、現在の義務の不履行に対して将来にわたって科される。したがって、両罰は、その目的が異なるので併科することができる。
5、秩序罰と行政刑罰は併科できるか。
行政刑罰と行政上の秩序罰は同じ行政罰であるが、その目的、要件、実現の手段を異にしているので併科することができる。
行政救済総論
[ 要点 ]
◆行政不服申立では違法性の外に不当性を争うことができるが、行政事件訴訟法では、原則として違法性しか争うことができない。
◆行政不服申立と行政事件訴訟制度のどちらを選択するかは、原則として自由であるが、例外として審査請求前置主義をとる場合もある。
◆行政不服審査法は、一般概括主義をとる。
◆行政不服申立は原則として書面審理であるが、行政事件訴訟は原則として口頭弁論主義をとる。
◆国家賠償を請求する前提として、行政事件訴訟を提起し、その判決を得なければならないという決まりはない。
1、行政救済総論
国民が、行政庁の処分その他の公権力の行使に該当する作為や不作為などに対して不服がある場合に、これを争う方法が選択肢としていくつかある。
行政庁に直接不満をぶつける、「行政不服申立」という制度、裁判所に対して不満をぶつけ判断してもらう「行政事件訴訟」、役所の窓口で不満の対応をしてもらう「苦情処理制度」がある。そのうち、試験に出題される「行政不服申立」と「行政事件訴訟」について概略を説明し、比較をしてみます。
2、行政不服申立と行政事件訴訟の比較
行政庁の処分(行政行為)などに対して不満がある場合の争う制度して、このように2つの制度があるのはなぜだろうか。
厳格に考えれば、権利を侵害された国民を救済する手段として行政事件訴訟という裁判の方式が確実であるといえるが、裁判は費用や時間がかかるためやりずらい面があります。
そこで、裁判という手段を取らなくても行政不服申立という簡単な手続きで侵害された権利を救済することが可能となるからである。
また、裁判の場合には、具体的な法律の適用の問題について審議されるので、行政作用の不当性(裁量権)の範囲まで審議することができないことが行政不服審査の存在意義である。
ただし、行政庁の裁量処分であったとしても、その裁量権の範囲を超え、又はその濫用があった場合に限っては、裁判所も判決においてその処分の取消を指示することができる。
なお、この両制度のどちらをとるかについては、原則として自由である。(このことを自由選択主義という)。例外的に不服申立の結論(裁決や決定という)が出た後に行政事件訴訟を起こさなければならないものもある。(このことを審査請求前置主義という)
3、行政不服申立の制度概要
行政不服申立に関する一般法に、行政不服審査法がある。
行政不服審査法は、「行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使にあたる行為に関し、国民に対して広く行政庁に対する不服申立のみちを開くことによって、簡易迅速な手段による国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正な運営を確保することを目的とする。」と規定している。
行政不服審査法は、いわば行政の国民に対するサービスという観点から作られているので、その間口をなるべく広くするために様々な工夫がにされている。
その工夫の1番目は、「一般概括主義」である。不服申立の対象が、一部の事項(適用除外事項)を除いたすべての事項にわたっている点にある。
2番目は、申立の対象を行政行為に限らず、不作為や事実行為(人の収容、物の留置、その他その内容が継続的性質を有するもの)も不服申立の対象に含んでいることにある。
3番目は、教示制度といって、行政庁が処分をする場合に、その相手方に対して、その処分についていつまでにどのような行政庁に対して不服申立ができるかについてなどの事項を知らせるものである。
行政不服申立の手続きは、原則として書面で審理される。
4、行政事件訴訟の制度概要
行政事件訴訟は、憲法に規定する国民が裁判を受ける権利を保障するものであり、裁判所が司法権行使の一環として行うものであり、その一般法として行政事件訴訟がある。
行政事件訴訟の手続きは、行政不服申立と異なり、口頭弁論主義をとり、訴える側(国民)と訴えられる側(行政庁)とが、裁判所で向かい合わせてお互いの言い分をぶつけ合う(対審)という方法で行われる。
5、行政救済と国家補償の関係
国家補償とは、行政行為等により損害が生じた場合の補償制度のことであるが、この補償制度と当該行政救済との関係が問題となる。例えば、国家補償の請求をするために、あらかじめ行政事件訴訟を提起して、その判決を得なければならないかというと、そういう決まりはなく、各制度の要件を満たせば、同時又は別々に提起してもかまわない。 |
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